[JMM]「Political Earthquake」平らな国デンマーク/子育ての現場から/高田ケラー有子
マスクをしている人など相変わらず一人もおらず、学校でも手洗いとうがいを促す程度にとどまっています。ホームドクターセンターに行くと、注意喚起のポスターが貼られていますが、手洗いをすることと、咳をするときは、手のひらで口を覆うのではなく、腕で� �を覆って(肘を曲げて口元に腕を持って行く)、周囲に気を配る事、となっているだけで、マスクをしろとはどこにも書いていません。
現在、デンマークでは報告されているだけで562人の感染者があったようです。用意されているワクチンについては310万dose、約155万人分ということで(デンマークの人口は547万人)、心臓や肺に疾患のある人や、糖尿病、喘息のある人に優先的に投与される予定で、これが約75万人。その他、妊婦や医療関係者などの優先順位があるので、一般にはほとんど回ってこないだろう、とのことで、自分で手洗いなどして予防に勤めよう、というところです。
新型インフルエンザも気になる所ではありますが、毎年恒例のABCサイクリングが9月7日の月曜日から2週間の日 程で行われることになり、今年も息子のクラスメート全員がエントリーして、毎日自転車で学校に通っています。このイベントは全国的なもので、全国の学校に通う、日本で言うと小中学生が対象で、クラス別に自転車で通った子供たちの数と日数(往復か片道か)をヘルメットの使用率も加味される形で計算されて競うもの。クラス全員が毎日往復ヘルメットを着用して2週間自転車通学すれば100%になるという形で、その比率を競うもの。今年の1等賞はクラス全員に新しい自転車がプレゼントされるとあって、モチベーションも上がっています。
去年、息子のクラスは同時に行われていた学内コンペで1等賞の映画鑑賞券を獲得し、クラス全員で映画鑑賞に行けた、ということもあって、みな本気で自転車をもらう勢いで す。息子の自転車は少しガタが来ているのですが、「かあちゃん、自転車もらえると思うから、それまで買わんと待っといてええで」などともらえる気満々です。そうなれば私も助かるので、雨が降っても風が吹いても「自転車自転車、、、」と念仏を唱えて頑張ってもらいたいところですが、全国で1クラスしかもらえないのでかなり難しそうです。ちなみに、全国で6321クラスがエントリーしているようです(9月4日現在)。
このABCサイクリングは、デンマークサイクリスト協会とTrygfondenというさまざまな安全(交通、健康、いじめや暴力など)をサポートする財団の共催で行われているイベントで、特に環境への配慮として、CO2の削減にも子供たちの関心をひくように、学校での指導も入っています。両親に� �で送ってもらうのではなく自転車で通うとどのくらいのCO2の削減になるのか、その計算などもしているようです。子供たちの健康を一番に考えながら、交通安全のルールを守る事も学び、環境についても考えていく、というイベントになっています。
脳の部分は何の責任です。
子育てに関する話題は今回はこのくらいにして、こちらでは日本の政権交代をどのように報じているか、全体的には、ほとんどのメディアが鳩山氏や民主党の政策については、まだ書けないという部分も多いようで、はっきり言ってさまざまなメディアで大きく報じられている、という印象はありませんが、選挙の翌日、8月31日の各紙を見てみると、自民党への罵倒ぶりが目立ち、なかなか辛辣な見方がされていました。
表題の「Political Earthquake」は、ムハンマドの風刺画問題で話題になったことのある、Jyllands-Postenの8月31日付けの見出しの一部です。Jyllands-Postenは右寄りの新聞でデンマークでは大手。一面トップにも端っこではありますが、鳩山代表の笑顔の写真と、「日本の大変革」という小見出しがついて、そこでは簡単な選挙の結果が報告され、関連記事が10ページと14ページに分けて紹介されました。
選挙の翌日にこうした記事を掲載していたのは、大手ではJyllands-Postenとやや左寄りのPolitiken、それに大手ではないですが左系のInformationという新聞で、それぞれの国際面でそれなりの紙面が割かれていました。やや右寄りの大手新聞Beringskeでは、紙面は全く割かず、欄外にたったの2行で、「日本の野党が選挙で歴史的で地滑り的勝利をもたらした。 詳細はWebで。www.berlingske.dk」というごく簡単なものでした。これは、選挙の結果がしっかり出てからWebでできるだけ迅速に正確な情報を報道しようという意図もあったかと思います。どのメディアにも共通して言える事は、この歴史的な結果を、「earthquake」とか「landslide victory」という言葉で報じており、政治的地震、とか地滑り的勝利という表現をしていることでしょうか。
見出しに使う表現は似ていても、記事の取り扱いとしては、右寄りはやはり右寄りな書き方ですし、左寄りは左寄りな感じがしますが、Jyllands-Postenが右寄りながらもまだしもニュートラルではないかと思える部分がある事と(これも個人による感じ方の差があると思いますが)、選挙結果を踏まえた上で最新の情報を元に書いている事から、その内容をかいつまんでご紹介したいと思います。Jyllands-Postenはその印刷までの速攻力に定評があり、いつも最新の情報が紙面に反映します。他社は最終結果を待たずに、出口調査を元にしながら、ある程度の開票結果を踏まえた上で、その「歴史的勝利」を書いていました。
Jyll ands-Posten8月31日付けの10ページ(国際面トップ)の詳細記事は、タブロイド版の見開きを使う形で大きく紙面が割かれ、立候補者リストの赤いバラが咲き乱れる前での、笑顔の鳩山氏の写真が大きく掲載されていました。この大見出しが英語にすると「Japanese Election became a Political Earthquake」というもので、「日本の選挙は政治的地震となった」というものした。
内容的には、まず中見出しで「自民党が半世紀死守して来た政権パワーを失い、野党民主党が傾きかけた船を立て直す矢面に立った!」というもの。
皮質の機能がどのように?
記事は、「日本人は地震には慣れていると思うが、今回の選挙地震は予想以上に大きな地震であった」と始まります。そして選挙の経緯として、「世論調査の結果からも予想はされていたが、歴史的な結果になった。投票締め切り後数時間でほぼ大勢が決まり、22時25分には野党が245議席となり、過半数の241議席を上まわったが、与党はその時点で公明党の9議席を加えても63議席にしか及ばなかった。そしてそのあとしばらくして民主党だけでも単独で政権を担える数字に届いた」という具体的な展開から紹介されています。
このあと、「この新聞をみなさんが読む頃には、鳩山氏は新しい組閣人事を発表している事でしょう。大方の予� �から鳩山氏は既に組閣人事をおよそ決めているでしょうし、公表されていないだけで、この時間には発表されているはず」となっていて、Jyllands-Posten的には、時差のあるデンマークから見れば、とっくに公表しているに違いない、という見解でした。「ただ、今確実に言えるのは、鳩山氏が次期首相になることだ」とあり、そのあと、鳩山氏の経歴に触れ、ねじれ国会の経緯とそのために二人の首相が相次いで辞任した事が紹介され、自民党敗北の要因へと続きます。
この項目に入る前に更なる小見出しがついていて、ちょっと過激だなと思うのですが、その小見出しは「Death sentence executed」つまり、直訳すると「死刑判決執行」とでもなるでしょうか。自民党の敗北をそのように表現しています。
死刑とまで言わなくても、要するにキックアウトというかノックアウトというか、とにかく一掃されたということなのでしょうが、Jyllands-Postenから見ると、たった一つの政党が半世紀にも渡って政権を維持して来た、ということそのものが不健康に写っているようで、そのような表現になっているのかもしれないと思います。
中身としては、「自民党の死刑判決はこれまでも何度も言い渡されていたが、その度に国民は最終的に自民党を選んで来た。今回、国民は死刑執行の判決を下したが、問題は、ここで自民党がノックアウトされたままになるか、自力で立ち上がれるかだ。そこが問われる。まず自民党は 新しいリーダーを選び、麻生首相は責任を取り、なくした信用を取り戻す事だ」と書かれていて、かなり強い調子で書かれています。
次に「大きなチャレンジ」と題する小見出しがあり日本の置かれている状況と鳩山政権が担うべき責任へと続きますが、「それはどうなるか、誰にも分からない」というような括りで締める所もあり、難しい状況に鳩山政権が直面することを物語っています。
具体的には「日本は内政と外交の両面で大きなチャレンジが必要。経済成長率は大変緩やかでしかなくとても弱い。世界的な不況がさらに拍車をかけている今、失業率は過去最高の数字を記録し、出生率も下がる一方で、日本は老人の国になっていく。年金生活者であふれ、それを支える人口が減って行くのは目に見えている。経済� �たとえいい方向にむかっても、その成長が遅いため、世界第2の経済大国としての地位を奪われるのも時間の問題。そのうちにその座を中国が奪って行くだろう。それは日本にとって大きな問題で、アジアの中でのNo1でいることをも難しくする。中国軍の成長も気になる所だ。アメリカによりかかる日本ではなく、アジアの中の日本として影響力を得て、浸透していくことこそ必要なことであろう」としています。
人は、幹細胞が発見発見
また「鳩山氏は選挙中からアメリカや中国との関係を見直すべきだと主張して来たが、これはワシントンから好まれていない」とも書かれています。
最後に「単独政党か2大政党か」という小見出しがあり、「今回、民主党は300以上の議席を確保し大きなパワーを得た。今後注目されるのは、この半世紀に渡る自民党一筋だった日本が、2大政党の時代へと移行するかどうかだ。自民党は埋められた泥沼から自力ではい出せるのか、あるいは、ただ単にまた別の政党(民主党)が一人勝ちして政権を死守するのか、ということだ」と括っています。
夫に助けてもらいながら一生懸命読んだ限り、本音をズバリと書いている印象が残りました。一部、理解� ��きない文章がありました(ねじれ国会になってから辞任した二人の首相以外に辞めさせられた首相がひとりあるとあった)が、遠い国日本での出来事、どこかで情報がねじれていることもあるのであろうと思いました。
14ページにも、また過激な見出しで「LDP's harakiri」(自民党の切腹)というタイトルの記事があったのですが、ここでの内容は、10ページの内容の繰り返しも多く、ただ、自民党というか古い体制に対する批判が主な内容で、鳩山氏が批判してきたlobbyingと呼ばれる議会外での自民党の政策決定に圧力をかけるやり方にも触れています。
「53年間続いて来た自民党政権が破れた。1993年に11ヶ月だけ他政党が政権を担ったが、今回は歴史的な敗北であり、かつてない事だった。予想通りではあったが、自民党の古いやり方には、ビジョンがなく、またリスクを恐れ因習に捕われ、違う事をするのを恐れた。また同じ党内での派閥争いも激しく、自民党は長い年月をかけて、自分で自分の首を絞めてきたのだ(ハラキリをした、と言う表現になっていますがそういう意� �で使っているようです)。
ただ、経済危機や外交問題など今抱えている難局を、民主党が乗り切るかどうかも疑問だ(この疑問だ、の意味には難しいのではないか、というニュアンスが含まれる)。それは誰にもわからない。
国民は自民党を一掃し、リスクを恐れずチャンスを選んだ。でも何を得るかはわからない。両政党ともいいことばかり公約として掲げた。でも両政党ともなにをどう具体的に進めるのか明確には示せていなかった。ただ、鳩山氏は国民が何を望んでいるかを知っていた」としています。
内政と外交面で、今後問われる鳩山氏の手腕に関して、民主党も、そもそも違う考え方をもっていた政治家の集まりだけに、それをまとめて行く事の難しさと、今後、中国が経済的に世界第2の立場となった 時、変化せざるを得ない日本を、どのようにして行けるのか、疑問を投げかけています。
「できるかどうか、それは誰にも分からないが、でもチャンスはある。そして、国民は今までずっと躊躇して来たが、鳩山氏のPolitical Sushiを選んだから、決断したのだ」としています。
また「今や衆参両院で過半数を確保した。今までは野党として反対の立場を取っていればよかったが、これからは明確なビジョンがないとだめだ」と括っています。
日本でもおよそ言われている通りですが、比喩表現が多く、「Political Sushi」の意味も、滅多に食べない贅沢な食べ物の意味で書いているのか、脂肪分の少ない健康食として書いているのか、そのあたりは私も夫も読み切れませんでした。いずれにしても「おいしいもの」の意味ではあると思いますが、デンマークのメディアの手法として、地震だとか地滑りという表現でも、言葉から来るイメージで、すぐにその状況が絵にできるインパクトのある伝え方をしていると感じました。
左寄りのPolitikenでも、半世紀続いて来たある種モノポリーな自民党政治にようやく有権者が判決を下した事や、その意味での「ジャパンモデル」が崩壊したというような書き方で、でも中身はおよそ似たような事が書かれていたのですが、一番違うのは、民主党のことをDemocratic Party (DPJ)としながら、「Center-Left-Party」としていることで、民主党をやや左寄りの政党としており、Jyllands−Postenでは右とも左とも書かず、中立的な立場に受け取れる書き方をしていたことでしょうか。
また、Jyllands-Postenでは、死刑執行などのキツい表現がありましが、Politikenでは、「鉄の三角構造」とでもいうような表現があり、自民党がこれまでやって来た「役所」と「大手企業」と「政治家」の関係を辛辣に批判し、また冷戦以降の世界情勢に実は日本は全くついていけていなかった、というような、いわゆる島国的で国際情勢に疎い部分を指摘する部分もあり、とにかく自民党の大敗を内心喜んでいるという感じがしないでもない、けちょんけちょんぶりで、自民党への復帰への期待感など微塵も示さない、という感じでした。Jyl lands-Postenが何度かに渡って、「自力で這い上がれるかどうかだ」と自民党に叱咤激励ともとれる表現を何度も使っていたことと比べると大きく違う点でした。
Politikenの記事の中でも、「自民党(LDP)は、LでもDでもPでもなかった」というのは一番端的な批判でしたが、自民党はLiberalでもく、Democraticでもなく、またPartyでもなかった(一つの政党というより派閥の寄せ集め、の意味)、というのは、なかなか鋭い指摘かも知れません。
全てを網羅できる訳でもなく、偏った情報になるかもしれませんが、デンマークの新聞紙上での報道のごく一部としてご紹介しました。
そういえば、こちらに来て間もない頃、小渕首相が就任した時「冷えきったピザのような人」と例えられていた事を思い出します。デンマーク人はこ ういう例えがほんとうに好きなようです。
ちなみに、鳩山氏の奥様の幸夫人のことは、Jyllands-Postenはじめ無料配布の新聞などでもそのユニークなお人柄が報じられいます。
「次期、ファーストレディはUFOにさらわれて金星に行った!!」という見出しで始まる幸夫人の記事。トム・クルーズの前世が日本人で、夢はハリウッド映画でトム・クルーズと共演する事などなど、かなり興味深く報じられていて、型破りなファーストレディとして、注目されそうです。
さて、16日に鳩山氏が総理大臣に指名されたら、デンマークのメディアは「宇宙人」以外のニックネームをつけるのでしょうか。どう表現されるのか、少々楽しみでもあります。
0 コメント:
コメントを投稿