2012年5月8日火曜日

地震断層をつらぬく/コアで何がわかるの?|高知コア研究所


高知コア研究所が立地する高知県は太平洋に面しています。ここでは、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込んでおり、水深4,000m級の深い溝があります。これを「南海トラフ」といいます。海底下には非常に活発で大規模な活断層があり、ここを震源としたマグニチュード8クラスの海溝型地震、つまり「南海地震」が100〜150年の間隔で起きています。

1707年に起きた宝永地震(マグニチュード8.6:日本史上最大)は、大きなゆれとともに巨大津波をもたらし,太平洋側の広い地域が津波*1に襲われました。この時に発生した津波は、2004年のスマトラ島沖地震(マグニチュード9.3)で被害の大きかったバンダアチェ(Banda Ache)の津波の高さに匹敵するほどの大きさだったようです。

今世紀中にも起きるといわれている南海地震。津波をもたらすような巨大地震は、どのようにして起きるのでしょうか?
その秘密は「断層」にあります。

地震は、地下または海底下で断層*2がすべることによって起ります。しかし、「するっとすべる場合」「引っかかりながらすべる場合」で、非常に大きな違いがあるのです。


どのように多くのウミガメの異なるspieciesはある

滑りやすい断層の場合の地震

滑りにくい断層の場合の地震

1999年 台湾中部域でマグニチュード7.6の地震が発生しました。チェルンプ断層が南北100kmにわたって破壊され、建物約3万棟が倒壊、死者2,488人,負傷者8,000人という台湾史上最も大きな地震災害をもたらしたのです。

しかし、この地震には1つ奇妙な点がありました。震源付近の台湾中央部・集集(Chi-Chi)は断層が数m動き、最も被害が集中したのですが、北部ではこの地震によって断層が12m近くも動いたにもかかわらず、ゆれは少なく、また、断層面直上以外の建物には被害が比較的少なかったのです。

この原因を探るべく、2004年 1つのプロジェクトが立ち上がりました。

このプロジェクトでは、チェルンプ断層を掘り抜き、集集地震の原因と思われる部分のコアをほぼ完全に採取しました。

下の写真のコア中央には「断層ガウジ」と呼ばれる黒色の部分がみられます。これは地震発生時、人間が歩く速度とほぼ同じ、毎秒2〜3mですべると言われている断層が、互いにこすれあい、細かく破砕したものと考えられています。この黒い部分を調べることで、断層がすべったときの状況や断層、周囲の岩盤の性質、ひいては地震の規模を知る手がかりを探ります。

チェルンプ断層 地下1,243mから採取されたコア


鳥は血寒さ

次に研究者達は、なぜ南北であれほど被害に差が生じたのか、断層(南北それぞれのコア)の性質の違いについて研究を進めました。その過程で重要なキーワードとなったのが、「断層と流体」です。

地層の中にはわずかながら水分(流体)が存在します。そしてこの流体は断層をすべりやすくする性質をもち、断層帯内外への物質の移動を活発にします。北部の断層から採取されたコアの間隙水圧(地下の水圧)や含水率を調べたところ、南部の岩盤より高いことがわかりました。

これにより、集集地震の際に北部で起きた「大きなすべり」は、地震発生時に断層の隙間に流体(間隙水)があったため、摩擦係数の低下や周囲の岩盤が強大な水圧によって破壊されるなどして、起きたのではないかと考えられています。このことからも、「流体の存在」は地震の際の「すべり挙動」を明らかにするためにとても重要な要素と言えます。

現在、このプロジェクトでは断層帯中の流体の流れやすさの測定や、どのように流体が流れたのかについて、化学分析から推定する研究を行っています。

ハイパードルフィンが捉えた大規模な亀裂と破壊された海底の一部 (2005/3/29撮影:BPPT/JAMSTEC)

震源(同心円)と被害区域(黄色),created by Cantus


ミネラル岩塩をどこで見つけることができますか?

集集地震は、プレートの沈み込みによって陸上で発生した地震です。しかし、地球上のプレートの沈み込み帯の大半は「海」にあります。では海で地震が起きた場合はどうなるのでしょうか?

2004年、インドネシアのスマトラ島沖で発生した地震はマグニチュード9.3、高さ数mから約20mにおよぶ津波をもたらし、死者22万人以上・負傷者13万人以上にのぼる大惨事を引き起こしました。この地震はインド・オーストラリアプレートとユーラシアプレートがぶつかり合うスンダ海溝で発生した海溝型地震です。海で起こる地震は、陸上で起こる地震に比べて、短いサイクルで、繰り返し大きな地震を起こすのが特徴です。

南海トラフ地震発生帯掘削計画による、コア採取ポイント
赤線部分:南海地震が起こったとき、すべるのはどちらの断層だろうか?

2007年、IODP(統合国際深海掘削計画)の1つである、南海トラフ地震発生帯掘削計画が始まりました。

南海トラフは日本列島の東海沖から四国沖にかけて位置するプレート沈み込み帯で、活発な地震発生帯のひとつです。南海地震を引き起こす原因となっているプレートの断層を詳しく調べることで、その地域を震源とする地震が起った時に、断層で実際にどのような事が起こるかを知ることができます。

高知コア研究所地震断層研究グループでは、近い将来に地震が起ると予想されている断層コアを使い、南海地震の室内模擬実験などを行う予定です。


高速摩擦試験器による岩石融解実験
※断層のある地下は酸素がないため、実際には火花はでません。

地震が起きたとき、地下では実験のように岩石同士がすれ合い、摩擦熱を発します。赤くなった断面からも、岩石どうしがこすれ合う時の力の大きさには驚かされます!

どうして南海トラフなの?

この海域では、過去に発生した地震の規模と時期、そして地震を起こした断層の位置がわかっています。そのため、震源となった断層のサンプルを採取・研究できれば、近い将来に起きる地震や津波発生の予測に役立てられると考えられているのです。



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