2012年3月31日土曜日

ダイオキシン類を調べる参考図書 | 調べ方案内 | 国立国会図書館


★ ダイオキシン類とは何か

<「ダイオキシン類」の定義>

 「ダイオキシン」は、もともと2個の酸素によって結合された化合物(ジオキシン)を意味する言葉です。しかし現在は、環境汚染物質・環境毒性物質である一群の有機塩素系化学物質をあらわす用語として「ダイオキシン」「ダイオキシン類」が使われるようになっています。

 日本ではダイオキシン類対策特別措置法において以下の3つの有機塩素系化学物質を「ダイオキシン類」として定義しています。

・ポリ塩化ジベンゾ‐パラ‐ジオキシン(PCDD):75種類の異性体を持ち、このうち7種が毒性を持つ。

・ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF):135種類の異性体を持ち、このうち10種が毒性を持つ。

・コプラナーポリ塩化ビフェニル(Co-PCB):209種類のPCBの異性体のうちの一つ� ��PCDD、PCDFと似た毒性を示す。

<生成工程>

 ダイオキシン類は塩素を含む物質の不完全燃焼や、薬品類の合成の際、非意図的に生成されます。ごみの焼却による燃焼工程、金属精錬の燃焼工程や紙などの塩素漂白工程のほか、森林火災、火山活動などでも発生します。

<性質と毒性>

 ダイオキシン類は無味無臭の個体ですが、毒性の強い物質で、発ガン性、生殖毒性、催奇形性、免疫毒性など多岐にわたる毒性があることが知られています。

<対策関連法規など>

 日本では、平成11年3月にダイオキシン対策関係閣僚会議により策定されたダイオキシン対策推進基本指針と、平成11年7月に議員立法により成立したダイオキシン類対策特別措置法の2つの柱を基にダイオキシン類対策が進められています。

★ ダイオキシン類を調べる参考図書

 以下にダイオキシン類を調べるための一般的な和書の参考資料を紹介します。上で述べたような基礎的な情報の詳細はほとんどの資料に記載されていますが、ここでは、各資料が特に重点をおいている分野にそって、〈化学的性質を調べる〉〈環境への影響を調べる〉〈対策技術を調べる〉〈環境省の調査報告書〉の4つの項目にわけて紹介します。また、各項目内では、先にダイオキシン類に特化した資料(NDL-OPACの件名検索「ダイオキシン」でヒットする資料)をあげ、次にダイオキシン類の情報を一部に含む資料をあげています。【 】内は当館請求記号です。請求記号が記載されていないものは、版によって請求記号が異なります。NDL-OPACでタイトルからお調べください。)

<化学的性質 を調べる>


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●『ダイオキシン : 化学・分析・毒性』(エヌ・ティー・エス 1999.10 【PA325-G24】)
 ドイツ・ウルム大学の研究者が行ったダイオキシン調査研究の結果をまとめた専門書で、ダイオキシン類(Co-PCBは含まず)に関する化学的な分析・調査の結果を見ることができます。本文は13章からなり、「環境問題としてのダイオキシン」、「分子構造と命名法」、「ダイオキシンの物性」、「ダイオキシンの生成」、「ダイオキシンの分析に関する方法論」、「ダイオキシンの検出と定量」、「ダイオキシンの挙動環境」、「ダイオキシンの分析におけるパターン認識方法」、「ダイオキシンの毒物学的特性」、「ダイオキシンに関する法的規制」、「ダイオキシンの取扱」など、幅広い分野について詳細な解説がなされています。掲載されるデータはドイツのものが多くなっています。

●『環境化学物質要覧』(丸善 1988.11� ��【NA2-E13】)
 多様な化学物質の中から、環境問題を起こす恐れのある化学物質318物質を取り上げ、その評価に必要な情報を提示した資料です。それぞれの化学物質について、名称、化学構造図、既存化学物質番号、CAS番号、性状、製法・生産量、代謝・毒性および事例等、分解・濃縮性、生態影響、分析方法、環境データ、規制、基準等の情報が記載されています。PCDD(pp.495-497)、PCDF(pp.498-499)、PCB(pp.504-506)についてもコンパクトな形で情報を得ることができます。

●『危険性廃棄物:その発生、対策、処理』(東レリサーチセンター 1990.11 【NA217-E412】)
 毒性物質や危険性物質を含んだ廃棄物を処理する際の手引書としてまとめられた資料で、様々な物質について、その存在状況、性質、用途、製造、廃棄物の発生、危険性、毒性、無害化、回収、取扱上の注意をまとめた資料です。PCDD(pp.292-301)、PCDF(pp.286-291)、PCB(pp.366-369)それぞれについての情報も記載されています。

<環境への影響を調べる>

●『ダイオキシンのリスク評価』(中央法規出版 1997.7 【NA217-G277】)
 環境庁(現環境省)が構成したダイオキシンリスク評価検討会によるダイオキシンの環境リスク評価の結果をとりまとめた資料です。本編では、ダイオキシン類の物理化学的性質を説明した上で、「毒性評価」(吸収・排泄のあり方、発がん性、生殖毒性等)、「暴露評価」(一般的な生活環境からの暴露状況→食物、大気からなどの暴露状況、偏りのある環境における暴露状況→魚の摂取量が多い場合、焼却場近くの場合など)の2つのリスク評価の子細を解説し、最後にその結果を踏まえてリスク評価のまとめを提示しています。食物からのダイオキシン類摂取量、魚からの摂取量など興味深いデータも多いです。調査対象としているのは、PCDD、PCDFの2つですが、Co-PCBについても参考として取り上げています。日本の環境庁主体の調� ��であり、調査範囲は国内に焦点が当てられています。


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●『ポリ塩化ジベンゾ‐p-ダイオキシン類及びジベンゾフラン類』(環境庁環境保健部保健調査室 1991.3 【NA217-E490】)
 国際化学品安全プログラム(IPCS)(国連環境計画(UNEP)、国際労働機関(ILO)、世界保健機関(WHO)の共同研究)が行った、ダイオキシン類(Co-PCBは含まず)のヒトの健康と環境への作用を評価するための研究の結果をまとめた資料です。ダイオキシン類の物理的・化学的性質と分析方法を説明した上で、ダイオキシン類の環境汚染の起源、人へのばく露、実験動物(ラット、マウス、モルモット、サルなど)に対する毒性、人への影響の症例研究など、多様な研究の結果を簡潔に解説しています。最後にダイオキシン類の危険性の評価をまとめ、勧告を提示しています。出版年が若干古いですが、国際機関主体の調査ということで研究項目や具体例の報告が広範にわたっています。

<対策技術を調べる>

●『新・公害防止� ��技術と法規. 2006 ダイオキシン類編』(産業環境管理協会 2006.1 【NA217-H1156】)
 公害防止管理者資格認定講習用テキストのダイオキシン類編で、ダイオキシン類について包括的な情報を得ることができる資料です。特に日本の法令や基本的施策の説明が充実しています。本文は3部構成で、1部の「公害総論」では、環境基本法や最近の環境問題など公害に関する基礎的な解説が掲載されています。2部の「ダイオキシン類概論」では、ダイオキシン類対策特別措置法体系、ダイオキシン類問題の背景、ダイオキシン類に関する基礎知識などを掲載しています。3部の「ダイオキシン類特論」では、ダイオキシン類の挙動とその排出抑制技術について、大気・水質・土壌・廃棄物分野にわけて解説しています。巻末に法規編があり、環境基本法、ダイオキシン類対策特別措置法など関連法規の全文が掲載されています。

●『ダイオキシン類の対策技術 : 生成抑制技術と除去・分解・分析技術』(シーエムシー 1998.6 【NA217-G417】)
 ダイオキシン類の防除技術を中心に紹介する資料です。総論編でダイオキシン類のリスク評価や法規制について紹介した後、対策技術を「ダイオキシン生成抑制技術編」(ストーカ炉・流動床炉など各種焼却炉)、「排ガスからのダイオキシン除去技術編」(バグフィルタ・粉末活性炭吹き込み法など)、「焼却残さ中ダイオキシン分解技術編」(焼却灰の各種処理技術)、「土壌・河川・浸出水のダイオキシン浄化技術編」(アルカリ触媒分解法、白色腐朽菌による分解など)、「ダイオキシン分析技術編」の5編にわけて紹介しています。各編では、様々な技術についての解説を、工程や使用機械の図解とともに読むことができます。


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●『産業・都市・放射性/廃棄物処理技術 : 新増補:ダイオキシン類ゼロ化技術』(福本勤著 補訂2版 共立出版 1998.9 【NA217-G426】)
 産業廃棄物、都市ごみ、放射性廃棄物の処理技術を体系化して記述した資料で、1998年の新増補版においてダイオキシン類ゼロ化技術に焦点を当てた記述が加筆されました。ダイオキシン類の成因・生成機構、生成抑制・除去技術の概要を説明したのち、飛灰中のダイオキシンを分解するための高性能焼却炉や高温溶融固化設備・技術、熱分解ガス化燃焼溶融技術、ごみ燃料化施設であるRDF化設備・技術、高効率ごみ発電技術、新型焼却炉などの技術を紹介しています。各技術の工程図や機械図なども含め、専門的な解説を読むことができます。

●『大気・ダイオキシン用語事典』(三好康彦著 オーム社 2005.6 【NA2-H48】)
 大気汚染とダイオキシン処理に焦点をあてた用語事典です。工場・事業場等で大気・ダイオキシン処理を担当している人や公害防止管理者試験等各種資格試験にむけて作られており、ダイオキシンに関する用語、処理方法に関する用語、分析方法に関する用語などを掲載しています。ダイオキシンの化学構造に関する構造図や処理装置の図解などもあり、使いやすい形で基礎的な知識を得ることができます。各用語には英訳がつき、巻末には英和索引がついています。

●『環境技術・装置大事典:環境汚染防止のための 1』(産業調査会事典出版センター 2003.2 【NA2-H6】)
●『環境技術・装置大事典:環境汚染防止のための 2(メーカー・製品資料編)』(産業調査会事典出版センター 2003.2 【NA2-H7】)
 環境汚染対策のための測定、分析、防止等の技術とその機器・施設を記述した事典で、1巻では技術と装置の概要について解説し、2巻のメーカー・製品資料編では、実際の機器製品と製造メーカーを写真とともに紹介しています。ダイオキシン類に関する技術や機械についても取り上げられています。

●『環境装置ガイドブック』(日本産業機械工業会 2001.8 【NA217-H919】) 
 環境汚染防止のための技術、装置・機器を取りまとめた資料で、様々な技術・機械についての情報がメーカーから提供されています。ダイオキシン類に関する技術や機械も多く取り上げられています。

<環境省の報告書>

ダイオキシン類対策特別措置法施行以降、環境省は国内のダイオキシン類の状況に関して様々な報告を公表しています。以下で紹介する報告書は、すべて環境省ホームページ(
トップ>大気環境・自動車対策>ダイオキシン類対策>調査結果・報告書等


●『ダイオキシン類対策特別措置法施行状況』(環境省 年刊)
 ダイオキシン類対策特別措置法の施行状況を把握するために各都道府県と政令指定都市計98地方公共団体から寄せられた報告をまとめた資料です。特定施設(基準適用施設)の届出等の状況、特定施設に係る規制事務実施状況、設置者による測定結果報告、土壌汚染対策の状況、条例制定状況などがわかります。

●『ダイオキシン類に係る環境調査結果』(環境省 年刊 【Z74-C902】)
 各都道府県が大気、公共用水域水質・底質、地下水質、土壌のダイオキシン類の汚染について常時監視した結果をまとめた報告書です。平成17年度に関しては、大気898地点・3026検体、公共用水域水質1912地点・2550検体、公共用水域底質1623地点・1730検体、地下水質922地点・924検体、土壌一般環境把握調査1314地点、土壌発生源周辺状況把握調査468地点におけるダイオキシン類汚染状況がわかります。

●『ダイオキシン類の排出量の目録(排出インベントリー)』(環境省 年刊)
 ダイオキシン類削減計画に基づき、毎年のダイオキシン類の排出量を目録にして示した資料です。ごみ処理施設や発電所、自動車排気ガスなど、さまざまな発生源からのダイオキシン類の排出量がまとめられています。

★ ダイオキシンを調べるインターネット情報

●ダイオキシン類対策(環境省水・大気環境局)
 環境省によるダイオキシン類対策のホームページです。環境省が行っているダイオキシン類対策の紹介、関連法令、策定した技術的指針やマニュアル、報道発表資料などの他、上記で紹介した報告も含む様々な調査報告書を見ることができます。他省庁や地方公共団体の関連ページへのリンク集もあります。

●ダイオキシンマップ((独)国立環境研究所情報センター)
 各都道府県の調査ポイントにおいて、ダイオキシン類が環境基準値を超過しているかどうかを見ることができます。2003年以降のデータに関して、地図上からの検索と調査地点名からの検索ができます。

●ダイオキシン対策ホームページ(国立医薬品食品衛生研究所)
 厚生労働省によるダイオキシン対策ホームページで、ダイオキシン類の健康影響評価を中心にまとめられています。ダイオキシンの健康影響評価に関するワーキンググループ、ダイオキシン類健康影響評価特別部会の報告などが掲載されています。

●ダイオキシン類(関係省庁共通パンフレット)
 環境省、総務省などで構成されるダイオキシン類対策関係省庁会議が、発行するパンフレットです。ダイオキシン類に関する基礎的な知識が、Q&A式で掲載されています。


●Dioxins and their effects on human health(世界保健機関(WHO))
 WHOのファクトシート・シリーズのひとつです。
 
●Dioxin(米国環境保護庁(EPA))
 米国環境保護庁がダイオキシン類とそれに類似する化合物の総合的な情報をまとめたホームページです。ダイオキシンに関するFAQやレポート、アメリカ合衆国内のダイオキシン類関係リリース、ダイオキシン規制などが掲載されています。



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